BIGHANDS 広島大学陸域環境研究会

目的 / objectives

現在の研究目的

現在は、主に下記のような目的で研究を実施中である。

R4-R7 科研費(萌芽)潮間帯藻場の保全に向けた新たな栄養塩循環論創生:主たる供給源は陸由来か再生産か? 代表;齋藤光代

目的:本研究では、「藻場にとって重要な栄養塩供給は陸由来か再生産か?」を明らかにするため、双方の経路によって供給される「リン酸態リン(PO4-P)」に着目し、(1)リン酸の酸素安定同位体比(δ18O(PO4))を用いて潮間帯へ供給されるPO4-Pの起源(陸域由来のリン:New-P、潮間帯で再生産されるリン:Rec-P)を分離・同定するとともに、(2)New-PおよびRec-Pの供給フラックスを推定し、(3)海草・海藻類が取り込むPO4-Pを起源別に明らかにすることを試みる。

R3-R7 科研費(国際共同)東南アジアでの汽水養殖拡大による栄養塩循環劣化を健全化する再循環システムの構築 代表;小野寺真一

目的:世界的に増加する食糧需要に対し、持続可能な水産資源の増産と活用は必要不可欠である。一方で、特に東南アジア沿岸域で拡大する内水面養殖により、土地利用の改変に加え、沿岸地下水や海域への汚濁負荷が増加し、周辺生態系の衰退(栄養塩循環の劣化)が生じている。本研究では、内水面汽水養殖が盛んで、都市化も進行し、さらに津波災害の影響も加わることで栄養塩循環の劣化が進行するインドネシア沿岸を対象に、これらの要因による沿岸への栄養塩負荷の増大を定量化し、水域生態系による栄養塩吸収とその食糧・肥料へのリサイクルによる負荷軽減効果およびそのシステムの社会実装への展開について経済・政策面から評価することを目的とする。

R3-R6 科研費(基盤B)流域水・物質輸送に伴う藻場変遷過程の解明:生態系サービスの定量化と活用に向けて 代表;齋藤光代

目的:本研究では、多様な生態系サービス機能を有する沿岸藻場の分布や藻場生態系の多様性変遷過程について、特に流域の水・物質輸送の影響に着目し明らかにするため、瀬戸内海沿岸域の数か所の藻場とその流域を対象に(1)河川水・地下水の流出にともなう物質輸送の定量的評価、(2)藻場と構成種の空間分布および時間変化の把握、(3)藻場生態系の食物連鎖構造および栄養塩循環の解明、および(4)藻場生態系の生物多様性の評価を行い、藻場の分布や多様性の変遷に及ぼす流域水・物質輸送の影響を定量的に評価する。

沿革

平成 21 年度第二回 陸域環境研究会 本研究会は、陸域における物質循環(長期~短期)とその結果生じる環境に焦点を当て、幅広い分野にわたる横断的な議論を行ってきた。

21世紀に先駆け、2000 年度に「風化と環境」研究会と称して、学内のメンバーを中心に第一回を開催した。当初は、学内の研究者間における分野横断的な議論の場として、また大学院生の発表の場として位置付けていた。内容的には、「水‐岩石相互作用」、「地球表層物質循環」に注目し、地球科学的な議論からスタートした。ただし、これらの内容は、地球環境問題である酸性雨や温暖化に関わるとともに、広島というロケーションが瀬戸内海気候という温暖小雨であるため、水資源問題や山火事問題とも関連し、水文学や生態学などの分野や環境科学分野との横断的な議論も進んだ。また、広島には花崗岩が広く分布し、豪雨時には土砂災害も多発するため、砂防学及び地盤工学的な議論も行われるようになっていった。開催数は、2003 年度まで 15 回を数え、このうち 1 回は森林総合研究所と合同で開催し、2003 年度には地球惑星合同大会でセッション「山地流域の水文地質と物質循環」を主催した。また、2001 年~2003 年には、科研費基盤 A 研究「瀬戸内流域における自然物質循環速度を考慮した環境劣化の影響評価(代表:福岡正人)」も採択された。以上の経過において、より広い視野と幅広く議論を行っていくという趣旨で、2004 年度より「陸域環境研究会」としてリニューアルした。地球科学的な時間変化と空間的多様性に対する視野をベースとしながら、陸域環境に関してより広い分野横断的な議論を推進してきた。例えば、窒素汚染の問題について、水環境学的な視点で議論するだけなく、生物地球化学的な視点、生態学的な視点、農学的な視点での議論を行ってきた。また、岩石の風化/侵食についても、理論・解析的なアプロ―チだけでなく、実験的なアプローチ、斜面・露頭スケールでのアプローチ、流域スケールでのアプローチなど多様な議論が行われるとともに、生態学的(菌根菌)な影響、水文学的な影響、人為的な影響が議論されてきた。特に、歴史学的なアプローチや人文学的なアプローチに関しても、踏み込んだ議論がなされてきた。さらに、瀬戸内海環境に関しても強く意識するようになり、陸域環境の海洋への影響に関する議論も膨らんできた。

この 5 年間での開催回数は 25 回に及んだ。このうち 6 回は、地理学会瀬戸内海研究グループ及び水文地理研究グループ、近畿中国四国農業研究センター、岡山理科大学(2 回)、神奈川県温泉地学研究所、西日本水文研究会と共催し、2005 年度地球惑星合同大会セッション「水循環に関わる物質輸送」、2006 年度公開シンポジウム「芦田川流域‐福山海域の水環境」、2007 年地球惑星合同大会セッション「水循環に関わる物質輸送」、2008 年度 AOGSセッション「Material transport in a watershed; from headwater to coastal zone」、2008 年度陸水学会課題講演会「陸域‐海域相互作用」をそれぞれ主催することで、外部の研究者との議論も盛んに行ってきた。また、2006 年~2008 年には科研費基盤 A 研究「瀬戸内海流域から海洋への陸域地下起源物質の不均一・非定常な流出機構の定量的評価(代表:福岡正人)」、 2007 年~2009 年には科研費基盤 B 研究「閉鎖性海域における地層中の窒素動態に及ぼす地下水-海水混合作用の影響(代表:小野寺真一)」などが採択された。 2009 年度に入り、今回は 2 回目の研究会となる。今年から新たに 3 年間科研費基盤 A 研究「瀬戸内海流域での地下水流動及び河川作用を考慮したリン循環の解明とその資源的評価(代表:福岡正人)」が採択され、これまでにない、生物地球化学的研究、堆積学的研究、海洋学的研究などの基礎分野から、資源学的総合研究(社会経済学、農学、鉱床学、歴史学、人文学、生態学など)、水産学的研究、地盤工学的研究などの応用分野まで、さらに多岐にわたる議論が必要となっている。そのため、今後も内部での議論をベースとしながら、近隣の研究機関との連携をはかり、多くの機会(研究会への招待講演や学会のセッション/シンポジウムの主催を含む)を設けて外部との議論を行っていく予定である。そして、これらの中から、いくつかの貴重な成果が発信されていくことはもとより、優秀な人材の輩出にも貢献していくことが望まれる。

過去の研究目的

Future water resources, its quality management and nutrient flux in Asian coastal megacities
(Asia-Pacific Network for Global Change Research、代表:小野寺真一、H31-R4)

目的:The megacities (MCs) with > 10 million population are counted 35 in the world. More than 60% of MCs are located in Asia and 70% of them are situated in coastal areas. Nutrients flux (NF) plays a significant role in maintaining ecosystem services and biodiversity in the coastal area. Quality management (QM) for water resources (WR) is important for the ecosystem as well as water use. In this project, coastal Asian MCs (AMCs) and associated cities are categorized based on their location (continent with a large river or island) and urbanization stage (US). The 1st US has a growing population, high dependence on groundwater for WR, and degradation of surface water quality; the 2nd US has a stable population, improvement of surface water quality by sewage treatment systems, but diverse groundwater pollution appears, and the 3rd US has population decline, growing dependence on surface water for WR, but expansion of groundwater pollution. Based on these criteria, coastal cities in Indonesia are as typical examples for island-1st US type, China as continental-2nd US type, Japan as island-3rd US type, are selected for study sites. For sustainable water use in AMCs and coastal ecosystem conservation, four specific subjects are proposed as A) Assessment of current WR and NF statuses considering vulnerability and resilience to water pollution; B) Reconstruction of NF history; C) Future scenario of WR and NF under climate extreme and human impacts; and D) Framework of QM for WR and NF.

沿岸生態系と農地を相互保全する地域再循環システムに基づく流域型農業環境革新の展開
(科学研究費 基盤A、代表:小野寺真一、H30-R3)

目的:本研究では、持続可能(効率的かつ効果的)な水利用・環境保全戦略を想定し農業に焦点を当て、農業及び沿岸環境双方の保全を実現する流域型農業環境革新、すなわち流域型水・栄養塩・土砂再利用(再循環)システムを運用する地域社会システムを構築し汎用的に展開することを目的とする。再利用システムとしては、農地で浸透した雨水の大部分が地下を通して沿岸に到達する地域を地下水流出型(A型)として地下水-養分ハイブリッド再利用技術を、雨水の大部分が地表を経由して流出する地域を地表流出型(B型)として沈砂池や河道堰の堆積物再利用技術をそれぞれ適用する。ここでは特に、①流域型再利用システムの適用にともなう流域物質循環(再循環を含む)の変化を定量化し、②その農地及び沿岸生態系保全効果を明らかにした上で最適な方法を提案し、③環境社会経済的評価を踏まえて、流域型再利用システムを運用する地域社会システムを確立する。     

底質改善と施肥の相乗効果によるアサリ成長促進と干潟の物質循環解析
(科学研究費 基盤B、代表:山本民次、H30-R2)

目的:干潟において,固形肥料を漉き込み,同時にアサリ稚貝を散布し,アサリの成長・生残を促す現場実証試験を行い,地下水流動および潮汐にともなう海水の浸透などにより,肥料から溶出したN, P, Fe等の主要元素が干潟内でどのように循環してアサリの成長につながるのかについて,数値モデルを用いて定量的に明らかにすること,を目的とする.

地下水が沿岸環境の多様性形成に及ぼす影響の評価:藻場生態系サービスの保全に向けて
(科学研究費 基盤B、代表:齋藤光代、H30-R2)

目的:本研究では,高い生態系サービス機能を有する藻場の保全に向けて,地下水が沿岸環境の多様性形成に及ぼす影響を評価することを目的とする.そのため,島嶼部沿岸を対象に(1)海底湧水(Submarine Groundwater Discharge: SGD)にともなう淡水,熱,栄養塩輸送量の空間分布および季節変化を把握するとともに,(2)衛星データに基づく藻場の空間分布および季節的消長との対応性を評価し,最終的に (3)陸域の地下水流動状況変化にともなう藻場の変化のモデル化を試みる.

インドネシア沿岸都市における持続可能な水資源利用にむけた地下水脆弱性の評価
(科学研究費 海外学術、基盤B、代表:小野寺真一、H29-H31)

目的:本研究では、沿岸都市の多様な地下水脆弱性、特に、地下水資源の質的リスク(汚染や塩水化)を定量的に評価することを目的とする。そのため、地下水の水需要が高い急成長段階にある沿岸都市を多く抱えるインドネシアを対象とし、都市によって多様な脆弱性とその要因を明らかにする。共同研究者;井岡聖一郎(弘前大学)、齋藤光代(岡山大学)、協力者;清水裕太(西日本農研センター)

二国間共同研究(中国)事業
(学術振興会、代表 : 小野寺真一、H28-30)

目的:本研究では、中国の珠江デルタ地域を対象に、都市化に伴う栄養塩・有機態炭素の排出および蓄積量の変化が沿岸域の汚染強度に及ぼす影響の評価を行い、日本の大阪湾沿岸地域における結果との比較を踏まえて、今後の水環境管理についての提案を行うことを目的とする。

「食糧循環」
(科学研究費 特設研究、基盤B、代表 : 福岡正人、H28-30)

目的:本研究では、世界の食糧・エネルギー需給(循環)の持続可能性を評価していくために、それらの循環量が世界でも最も多い国の一つであるブラジルに注目し、食糧及びバイオエタノール生産の持続可能性について、食糧の主要成分である窒素の循環を軸に評価することを目的とする。

大阪湾圏助成事業
(代表 : 小野寺真一、H26-28)

目的:本研究では、大阪湾に対する下水道由来の栄養塩負荷の影響を明らかにすることを念頭に、特に①下水処理場からの直接的な流入負荷および②沿岸堆積物からの二次的な負荷(再生産)の影響を分離したうえで、それぞれ定量的に評価することを目的とする。

渇水リスク農業地域における持続可能な流域地下水ハイブリッド再利用システムの構築
(科学研究費 基盤A、代表:小野寺真一、H25-H27)

目的:持続可能な“水・養分ハイブリッド 再利用”方式の流域地下水管理システムを構築する。 *下記(1)の現地検証が中心で、(2)で普遍化、(3)はできる範囲にとどめ次世代プロジェクトにゆだねる。(1)富栄養化地下水再利用システムの現地検証;①近中四農研チーム;農地試験での検証(はくどう灌水orまるどりorスプリンクラー)、②齋藤・小野寺;地下水調査に基づく検証(ボーリング、流動速度、年代、溶存窒素、溶存窒素ガス)、(2)数値モデル解析によるシステムの効果の検証;広島大学PD・小野寺・齋藤・(清水);SWAT(流域水収支、栄養塩収支)・Hydras(溶質移動)・MODFLOW解析(地下水流動、窒素輸送)

沿岸地下におけるリンのホットスポット形成とその生物生産に及ぼす影響の定量的評価
(科学研究費 基盤A、代表:福岡正人、H25-H27)

目的:本研究では、沿岸地下におけるリンのホットスポット(濃縮域)形成とその生物生産(沿岸生物生産及び農業資源生産)に及ぼす影響を定量的に評価する。(1)リン堆積域・堆積量解析:佐藤・金・平山(広島大学)、竹内(フジタ地質/岡山理科大学)、地下(大阪大谷大学)・清水(近中四農研);最近15,000年間(最終氷期以降)での環境変動にともなう沿岸地下でのリン堆積域及び堆積量を①堆積物解析及び②鉱床学的解析により定量的に評価する。(2)リン濃縮過程・輸送解析:小野寺・金(広島大学)、宮岡(三重大学)・齋藤(岡山大学)・早川(秋田県立大学)・奥田(京都大学生態研);堆積後における堆積物中でのリン変質・輸送・濃縮過程について、①水・溶質輸送解析及び②生物地球化学解析により解明する。(3)生物生産影響評価:山本(広島大学)、福岡・金(広島大学)・清水(近中四農研)、齋藤(岡山大学);①リンのホットスポットが沿岸生物生産、及び、②農業肥料資源に及ぼす影響を定量的に評価する。

瀬戸内海流域での地下水流動及び河川作用を考慮したリン循環の解明とその資源的評価
(科学研究費 基盤A、代表:福岡正人、H21-H23)

本研究では、富栄養化の結果、リンの総量規制が行われてきた瀬戸内海に流入する一級河川流域を対象として、 地下水流動及び河川作用(堆積作用)を考慮した短期的~長期的なリン循環の解明を行うとともに、その資源的評価を行うことを目的とする。

特に、1)長期的(数千年スケール)な河川による堆積過程を考慮したリン循環を解明し、流域内でのリン貯留場と貯留量を評価し、 2)短期的( 年スケール)なリン循環(土壌侵食‐ダムや干潟での堆積‐地下水溶脱)とそれに対する農業・生活排水の影響と貯留場の変化を明らかにし、 3)沿岸堆積物からの現在のリン再生産量(再利用可能リン)を定量化し、その生態系への影響を評価し、 4)流域内に存在するリンの利用可能性を環境資源的に評価し、これらを将来枯渇する既存のリン鉱石に対する代替策として提案するものである。

また、関連して下記の研究も実施中である。
目的:持続可能な“水・養分ハイブリッド 再利用”方式の流域地下水管理システムを構築する。
*下記(1)の現地検証が中心で、(2)で普遍化、(3)はできる範囲にとどめ次世代プロジェクトにゆだねる。(1)富栄養化地下水再利用システムの現地検証;①近中四農研チーム;農地試験での検証(はくどう灌水orまるどりorスプリンクラー)、②齋藤・小野寺;地下水調査に基づく検証(ボーリング、流動速度、年代、溶存窒素、溶存窒素ガス)、(2)数値モデル解析によるシステムの効果の検証;広島大学PD・小野寺・齋藤・(清水);SWAT(流域水収支、栄養塩収支)・Hydras(溶質移動)・MODFLOW解析(地下水流動、窒素輸送)

備讃地域陸海域の水・栄養塩動態解明と農業への再利用技術の開発
(先端技術を活用した農林水産研究高度化事業、代表:吉川省子((独)農業・食品産業技術総合研究機構)、分担者:小野寺真一、高橋英博他4名、H19-H21)

本研究では、水資源に乏しい備讃地区を対象として、「陸域~海域までの水・栄養塩の動態解明」を行い、栄養塩濃度や比率からみて水産業被害を生じる可能性の高い海域を特定し、その海域の栄養塩負荷に深く関わる陸側流域において、農業側の栄養塩制御対策を検討し、そのひとつとして、富栄養化した地下水を灌水して栄養塩を作物に吸収させることにより海域への栄養塩負荷を低減する「水・栄養塩の農業への再利用技術」を開発する。

閉鎖性海域における地層中の窒素動態に及ぼす地下水-海水混合作用の影響
(科学研究費 基盤B、代表:小野寺真一、分担者:北川隆司、福岡正人他3名、H19-H21)

本研究では、閉鎖性海域(内湾)において赤潮発生に影響を及ぼしている溶存窒素の動態に関して、内湾流域(陸域沿岸部-潮間帯-湾域)を対象として、地層中での地下水-海水混合作用(地下水流出-海水の浸入;ハイポレーイック効果)の影響を明らかにすることを目的とする。詳細は以下のとおりである。 1)潮間帯における地下水-海水混合過程を明らかにし、地下水による窒素流出量、海水の浸入及窒素浄化、有機物の堆積-分解過程を定量化する。 2)陸域地下水中の硝酸性窒素と地層中の有機炭素との反応(脱窒)を同定し、溶存窒素消失量、及び温室効果ガス放出量を定量する。 3)湾域海水中で窒素収支計算を行い、沿岸地下水の窒素流出などを検証する。 4)内湾流域の窒素動態に関する上記3領域を連結するモデルを構築し、環境影響を評価する。

沿岸地下水の積極的・持続的利用のための人工涵養及び窒素浄化法の開発
(科学研究費 萌芽、代表:小野寺 真一、分担者:福岡正人、H20-H22)

本研究では、水不足の問題を抱える瀬戸内や島嶼部において、持続的な地下水の利用、特に渇水時の地下水利用及び質的な保全を念頭において、人工涵養手法の開発及び揚水操作による地下水汚染浄化手法の開発を目的とする。

1)渇水時の地下水利用法の開発;ダムやため池と地下水を補完的に利用し、渇水期には地下水を利用し、洪水期には地表貯水池にためた水を地下に人工涵養し、5年スケールで地下水収支を管理する流域管理システムを提案し、その持続可能性を検証する。
2)硝酸汚染地下水の浄化法の開発;地下ダムによって貯水された硝酸汚染地下水を還元環境下にある深部に強制的に侵入させ、浄化させる技術を提案し、検証する。

「瀬戸内流域における自然物質循環速度を考慮した環境劣化の影響評価-岩石-水-生物相互作用の速度論的解析-」
(科学研究費 基盤A、代表:福岡正人、分担者:於保幸正、北川隆司、開發一郎、佐藤高晴、小野寺真一、平山恭之、山中 勤、H13-H15)

研究全体としては、瀬戸内流域の物質循環速度の定量化と環境劣化の影響評価を目的として、自然循環速度と人為的劣化速度を分離して評価し、山火事流域や土砂災害地域において土壌劣化傾向を明らかにした。

「山体基盤岩地下水流動の実態解明とその水資源的評価」
(科学研究費 基盤A、代表:嶋田 純、分担者:小野寺真一他7名、H14-H17)

研究全体としては、安山質凝灰岩からなる岩盤流域における地下水流動の実態解明とその水資源評価を目的として、山地源流域から、流出域である海岸まで観測を主体に調査を行い、実証的な研究成果を挙げた。

「黒瀬川水質改善のための流域自然内部循環の評価とその効率的利用に関する研究」
(広島大学地域貢献研究助成、代表:小野寺真一、分担:開發一郎、福岡正人、北川隆司、H14)

本研究は、黒瀬川の水質汚濁改善のために、流域内の自然循環機能を定量的に評価し、その機能の効率的活用についても検討することを目的とした。特に、負荷経路および負荷量の定量を行い、流域内の自然浄化機能のうち、これまで不十分であった、地下水・湿地における浄化機能、河床土砂(粘土)における浄化機能について定量的評価を行った。対象とする物質は、有機・無機窒素化合物(溶存、粒状態)、微量重金属である。

「水および土壌の重金属汚染に関する地球化学的研究」
(科研費特別研究員奨励費(外国人)、受入者:小野寺真一、H15)

流域における重金属流出を制御する水及び土砂との相互作用を解明するために、世界的なフラックスのデータベースを構築し、特に水溶性重金属―土砂相互作用に及ぼす塩分濃度及びpHの影響を実験的に解明した。

「山地流域における化学的風化の炭素固定機能とそれに及ぼす酸性化の影響評価」
(科学研究費 萌芽、代表:福岡正人、分担:小野寺真一、平山恭之、H15-H16)

本研究では、山地流域規模で化学風化速度とその炭素固定機能を定量的に評価し、その酸性化による影響を評価することを目的とし、文献のレビューとともに実験的研究、試験流域研究を行った。

「自然浄化プロセスを活用した地下水汚染物質の原位置除去・浄化」
(科学研究費 萌芽、代表:田瀬則雄、分担:小野寺真一他1名、H16-H18)

本研究では、「どのような条件下で樹木が硝酸性窒素の浄化帯として機能できるのか」を現地での観測と数値シミュレーションにより明らかにし、実用化の可能性の検討を目的として研究を行った。

瀬戸内海流域から海洋への陸域地下起源物質の不均一・非定常な流出機構の定量的評価
(科学研究費 基盤A、代表:福岡正人、H18-H20、終了:報告書必要な方は連絡をください)

本研究は、閉鎖性海域への陸域地下起源物質の不均一・非定常な流出機構を定量的に評価し、海洋への影響評価を行うことを目的とする。特に、瀬戸内海において問題視されてきた陸域起源物質のうち、代表的な成分であるにも関わらず、これまで十分な議論のないリン(P),シリカ(Si), 微量金属(Mnなど)を対象とする。また、以下の点に着目する。

1)流域の不均一性を考慮する。特に、地質、地形、植生という自然 的背景の不均一性、土地利用や建造物(ダム)といった人為的不均一性、インプット物質量(大気降下物、人為的負荷)の不均一性の影響を総合的に明らかにする。
2)流出に関する非定常性の影響を明らかにする。特に、洪水流出時における様々な現象を解明する。

瀬戸内海の内湾における陸域地下水流出の影響評価-健全な沿岸海洋環境の形成へ向けて-
(広島大学地域貢献研究助成、代表:小野寺真一、H18)

本研究では、健全な沿岸海洋環境の形成のために、地下水流出の役割を明らかにし、特に瀬戸内海モデル(図2)を構築することを目的とする.そのため、

1)地下水流出域の同定
2)栄養塩、溶存酸素の流出量の評価
3)地下水流出に対する土地利用、底質堆積物の影響評価

を、福山及び江田島で行う。

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